2016年 03月 08日
消えてゆくもの
蔵4号は確かに海のそばだったけれど、数日ぶりの景色は一変していて、
広い角度で海までひらけて、遠くまで見渡せるようになっていた。
当然見られることも増えて隠れ家的要素は相当減ってしまった。
僕は古い建物とかが特に好きなわけじゃないけど、
趣のある良い感じの建物というのは僕の住む町でもほとんど無くなった。
なんとなく好きだった蔵の隣の鉄工所も今回の解体で消えた。
そこも裏から見ると、もうほとんどの屋根が抜けていた。
でも、トイレに行くたんびに見かける正面から見た顔が渋い感じだった。
鉄工所のおじさんは歳を取り過ぎたため引退したらしい。
むかし、僕が4号の室内に鍵を置いたまま、蔵の鉄の扉を閉めてしまっておじさんにお願いしたことが一度あるくらいだったし、挨拶もあんまししたことがなかった。大潮で蔵の周辺が浸水したときは鉄工所で動くのは扇風機だけだった、知ってるのはそのくらい。
以前、僕がお世話になってる夫婦が遠くからこの寂れた町にやって来た時、
「龍三の色はこの風景からのものだったんだなぁ」と言われたことがあったっけ。
ぜんぜんうれしいとか感じないけれど、それもあると今は思う。
by ryuzo3net
| 2016-03-08 22:51
| 蔵④号日記
|
Comments(2)